奴隷解放運動の父、リンカーン大統領が実はヴァンパイヤ・ハンターだったら・・・という超大胆な設定のアクションである。

普通に作ってしまったら、それこそB級映画で、かなりクソ作品になっていたことうけあいの品であるのだが、これの監督はロシアの鬼才ティムール・ベクマンベトフ(※)である。

前作までで見せた、ダークな世界観こそ押さえ気味だが、アクションシーンでは如何なくその手腕を発揮した。

特に圧巻なのは、馬が大量に走り抜けるシーンでの格闘戦。
縦横無尽の動きで闘う主人公とヴァンパイアの戦いがこれでもかと描かれる。言葉で説明しても???なので観た方が早い。

そして、これ以外にも定期的にアクションシーンがうまい具合に入ってきて、そして毎回バトルスタイルが異なり飽きない。

特に特徴的な演出がいくつかある。
対象がユラっとゆれ、一瞬にして加速するというモーション。よくマンガで、いきなり神速の動きを敵がするときの予兆のようなアレである。これのビジュアル化は監督の功績だと思う。

また、格闘シーンでボディのコンタクトが多いのも目立つ。さらにいうなれば通常のアクションをハイスピードで捉えながらも、ボディコンタクト時のみをスローで捉える演出。打撃のインパクトが顕著に見えて迫力が増す。フランスのアクションでも見られる手法。複雑な動きや駆け引きがわかって、激しい動きも流麗に見える。ありそうでなかなかない演出だ。構図の作り方も綺麗で一種の様式美を感じる。

物語も、吸血鬼は仲間を傷つけられないという制約があることである程度の奥行きをみせつつ展開するので一本調子でもなく楽しめる。

総じて素晴らしいエンターテイメント作。なかなかにブラッディなので、軽いホラーがダメな人はうぉって思うかもしれないけど。まあ基本アクションのりなんで、問題ないとは思う。



※監督について。

この監督の作品を初めてみたのは、いつかの東京国際映画祭のファンタナイトでの『ナイトウォッチ』。現在もなのかはわからんが、ロシアの史上最高興行収入を誇るSFトリロジー。この作品は元々日本未公開だったのだが、ファンタナイトのファンで署名を集めて劇場公開を決定させた思い出ある作品である。

しかし、悲しいかなカルト的人気を得たが、大ヒットにいたらず日本では未だに最終作まで公開されていない。2作目の『デイ・ウォッチ』まではレンタルできる。本当はこの後『ダスク・ウォッチ』『ファイナル・ウォッチ』で完結する。

太古の昔より続く光と闇の勢力の覇権争いが現代まで続き、その長年保たれていたバランスが崩れゆく様を描く。時系列の乱れや登場人物の多さ、そしてあまり説明的でないことから、複雑な物語であったので仕方ないといえば仕方ない。しかし、SF大国ロシアの誇る作だけあって素晴らしい。

練られた世界観やディティールのみならず、そのビジュアル面も斬新。人が一瞬にして加速する様を双眸の光の筋がユラっっと動くように表現したり、格闘戦においてインパクト時のみをストップモーションで描くなど見所満載。

『ナイトウォッチ』だけでも面白いので、ぜひ観るべし。

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