子供たちの友情物語を軸に、かの国に根付く宗教問題を垣間見ようというなかなかの意欲作。表立って対立意識や対立はみせずとも、宗教の違いによってたしかに溝は存在してしまうのだ。ただ信じるものの名称が違うだけかも、そしてゴールは同じでも、その過程が違うことでやはり対立はうまれてしまうのである。
そんな哀しい軋轢をこの作品は実にうまく表している。

そして、また軸となる少年達の友情物語だけをみても、子供だけに備わる純粋な感覚を通して残酷な現実が平静と語られ、普通の人間ドラマ作品としてもいい出来だと思う。家族間のもめごとの描写など普遍的だ。

さて、軸となるのは少年たち、ピートとダニー。ピートの家族は敬虔なカトリック一家。そしてダニーはユダヤ教、それも父親がラビである。

ふたつの家族にはじめ、接点はないが些細なことから関わりあうことに。
まずは、ピートが学校で尼さんに怒られ、もしかしたら自分は今のままでは天国にいけないかもとおもったところから話は始まる。いいことをしないとと思いついたのが、偉大なカトリックの祖がやった改宗を説くこと。で、ユダヤ教徒をカトリックの道に改宗させようと考える。向かった先はシナゴーグ。そこのラビはダニーの父だった。

そしてまたダニーの家が火事になったとき、助けた消防士がピートの父だったことからもかかわりが生まれる。

ピートとダニーはこれらの出来事により仲良くなっていく。が、ダニーが白血病であることが判明。そして哀しいかな、親は隠しているつもりだが、ダニーは自分の死期をうすうすと感づいていた。そこで、ピートはダニーを何とかして天国に迎え入れてもらうために改宗させようとするのだが…。

難病を扱うと妙にうそ臭く、泣かせようという意思が見え隠れしてしまう作品が多い中、実に爽やかに描いているところに才気を感じる。前述のように、実は宗教問題が複雑に絡み合うシビアなテーマをもった作品だが、少年たちの素直な訴えによってすんなりとメッセージは伝わってくるだろう。
重たくシリアス一辺倒だと説教じみてしまうところを、さわやかに成長物語として描いているため見ている方も余裕が生まれるし、テンポもよい。
子役達の演技力にも脱帽。あまりメジャーな作品ではないが、確かな筋をもった作品だ。

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