『イノセント・ガーデン』6/10
2013年12月9日 映画 コメント (2)期待しすぎたせいもあるのかもしれないが、それでもこの映画はあと一歩のところで失敗しているような気がしてならない。
世間的には成功作としてあげられ、支持する評論家やファンもたくさんいるホラー作品『シャイニング』。原作者のキングは、この作品を好きではないらしい。そして、その理由は完成度や怖さの面ではなく、ジャックがはじめっから狂気の淵にいる顔だから、という理由とのことだ。
この作品を見たときに、まっさきに感じたのはそこである。テンションの差が前半と後半で無さ過ぎるのである。
そして、無いのならそれはそれでよく、実は疑わしき人物だった彼は関係なくて、実は・・・・ってな脚本のヒネリがあるべきだと思うのだが、それには至らず、非常にわかりきった形のストーリーが恐ろしく荘厳に仰々しく語られるだけ。
脚本家の意図を解せず、映画化されてしまったように感じてならない。
しかし、監督に力がないかといえばまったくそんなことはない。
むしろ、演出面や画の構成力はズバ抜けた感性の持ち主であるように感じる。
また、『ブラックスワン』の音楽を手掛けたスタッフたちによる神経質に鳴り響く音楽も一際緊張感を演出していたのも間違いない。
キャスト陣も申し分ないパフォーマンスを魅せている。とりわけ、主人公を演じたミア・ワシコウスカの常人ならぬ雰囲気の再現率はその類まれなるエメラルドの双眸もあいまって実に神秘的で見事。しかし、考えてみるとこれが反ってよくなかったのかもしれない。
あまりにゴシックな顔立ちで、その所作もあいまって、はじめから内ににじむ狂気がこぼれ出すぎている。彼女は単に演出に従っただけなのかもしれないが、あまりにもそれが強すぎる。また、彼女の特異さを写すパートが多すぎたのか。これにより、本来なら、マシュー・グードの狂気に同調していくイノセンスが描かれるはずが、はじめから狂気が狂気に仲間意識を見いだし惹かれていくだけのように見えてしまう。これらのせいで前半と後半の色にあまり違いがない作品となってしまっている。じわじわと観客を蝕む狂気や恐怖が隠れていないのだ。
本来驚くべき、戦慄すべき結末に全く驚きがないのはこの点があるからだろう。
これらを差し引いても、後半の展開は、どこか漫画のような展開で、漫画やサブカルに触れている人は既視感を覚えるかと思う。この部分もかなりラストの展開を予見できてしまった要因となっている。
このように完璧に近い作品は、こんなわずかな瑕瑾で崩壊してしまう。非常にもったいない作品だ。
※余談だが、本作のこの巧みな脚本を作ったのは『プリズン・ブレイク』シリーズのイケメン、ウェントワース・ミラー。
イケメンな上に物書きの才能まであるとか、ズルいにも程がある。是非次回作では監督もやって、完璧なる玉となった作品をみてみたい次第である。
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