微妙にネタバレあるよ。
恐怖を感じて活性化する神経と快感のそれとは同じものであるときいたことがある。この映画はそのことがよくわかる作品となっている。
家族のリユニオンを血の惨劇に変える突然の襲撃を観て、我々は様々な疑問と驚きを覚える。
何故彼らが狙われたなのか? 犯人の動機は?犯人は誰なのか?
通常であれば、これらを引きずりながら展開していくはずだが、この作品はあっさりと中盤で全てをさらけ出してしまう。そして、我々がホラー映画を観る上で、常に感じている疑問にも答えるのだ。何故被害者は常に反撃しないのか? 勿論、彼らが微力ながら反撃することはあるにせよ、圧倒するほどの反撃を見せることはない。しかし、実際には犯人達を上回る技能や知恵を持った被害者もいるはず。なぜ返り討ちにあうことはないのか。そんなホラーの暗黙の了解を打ち破っていくのが、本作の後半である。
後半で、狩られる者は、一転し復讐に燃える鬼となる。しかし、前半での惨劇を見ている我々はこの復讐者に対して、共感を覚える。あるいは、もっとやれ、もっとやれと応援すらしているかもしれない。
前半の緊張感と不条理の抑圧は、復讐者の無双状態がもたらすある種のカタルシスにより、払拭され我々により一層の爽快さを感じさせることとなる。
前述した、暗黙の了解を打ち破ることに加え、この見事な立場の変換がこの作品の魅力といえよう。
引き金を引かれた途端に再現なく、内に秘めた狂気を発露させていく。
日常に潜む異常は、加害者の側にも、被害者の側にも実は等しく存在していたのだ。
しかし、その異常さに気付いたときには、時すでに遅し。
劇中での復讐者の結末に等しく、快感の後ろにひた隠しとなっていたうしろめたい欲望に塗りつぶされて、その身を滅ぼすのだ。かつての加害者たちと同じように。
※印象的なホラーには、印象的な殺人鬼が登場する。本作の動物仮面もなかなかに不気味で、そういうビジュアル面にも監督の細やかなセンスを感じる。
※撮影面でも、ステディカムを使用しない手持ちのブレブレ感を多用し不安を煽るショットをはさむのがうまい。印象的なシーンに、スローモーションを使ってくるのもホラーの演出ではあまりみないもので特徴的だ。
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